許知遠
Xu zhiyuan ─ Writer, TV host
許知遠さんは、中国で作家・ある大手オンライン動画配信サイトの有名なドキュメンタリー番組の司会者として広く知られています。許さんの東京滞在中に、有半堂がインタビューを行いました。コロナで自粛している時期の創作についてや日本に対する印象の変化について語っていただきました。
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Creator's Interview
東京に「閉じこめられている間」なにか心境的な変化はありましたか? どのような作品を書いていますか?
旧正月に旅行で日本を訪れ、コロナによって中国に帰れなくなり、そのまま東京に滞在することとなった。特別な状態の東京を体験する事ができたと思う。危機に陥ったとき、この国が危機にどう向き合っているかが分かった。自粛のために行動範囲が狭くなってしまったが、まるで反比例するかのように思考の範囲は広がった。ちょうど『梁啓超』(中国清末民初のジャーナリスト・革命家・政治家)の第二巻に彼が東京にいた頃の生活について書いてあり、今の東京での経験が彼を理解するのにとても役立った。
コロナが流行している間、東京で過ごすことで人生になにか影響がありましたか?
絶対に日本語をちゃんと勉強しなきゃいけないと思った(笑)。人生に直接どんな影響をもたらしたかは、時間が経たないと判断しづらい。ただ、今回のコロナはとても重要な「加速器」と「鏡」であったと思う。
これまでに出会った困難や問題、弱点が露骨に表れてしまう。あるいは、物事が元々進んでいた方向へ加速している。例えば、米中関係には元々齟齬があって、それがコロナで一気に加速した。私達の将来に対する悩みなども、同じように加速している。何もかもが加速する中で、私は自分がどうすればコロナ渦に巻き込まれず自分自身でいられるか探ることがとても大事だと感じた。今、世界中がコロナに支配されていて、まだ「コロナだから」起きた考えや行動ばかりだと思う。
東京での自粛生活で、日本に対するイメージは変わりましたか?
今までは日本に対して、とても抽象的な認識だった。例えば、明治維新などの有名な出来事や有名な歴史上の人物に興味を持ち、そこから日本について知っていった。「孤立」というのが、日本に対するイメージだった。日本は鎖国していた頃も、孤立主義だった。言語面でもほかの外国語に興味がないように見え、自ら孤立していたという印象を受けた。
今回の件で、もっと細部が見えたと思う。日本は民主主義の発展国で基本的人権や自由が保障されているが、とても強い集団意識のルールがあって、皆がそれに従っている。ここがほかの国と違う、日本の奇妙なところだと思う。例えば、安倍政権はわずか15%の支持率だが、すべてのコロナ対策に皆が従っている。それは政権を支持するか否かというよりは、集団意識によって従っているのだ。それを他者として見て、とても面白いと思いながらも、少々悲しいとも感じた。強い集団意識の下で、「個」は我慢するしかない。怒りも悲しみも実は自由に表現できず、抑えて抑えて全部自分で消化するしかないのだ。